42 流れる三月の雑記

 

 

3月2日日曜日

鳥になって自由に空を飛びまわりたいなんてうっとり憧れながら空を見上げているのはあまりにも鳥のことを無視している、鳥というのはほんとうに自由な存在なのか、鳥の世界に空のルールがあることを知らないはずはない、縄張り争いも生存競争も絶滅危機さえあるということを知らないふりして詠む歌は、人間の小さな娯楽の狭い範疇を超えることはない、それは文化にさえ情緒にさえならない。

 

3月7日金曜日

ものを書いていたらウトウトし、はんぶん夢みながらものを書いたら、まったく覚えのない辻褄の合わない文体になっておりたじろいだ。夜になって犬が用もないのにベランダへ出て行くのでついていくとそういえば最近ゆっくり眺めるのを忘れていた星たちが、深い藍色の夜空一面華やかに散らばっておりその圧倒的な美しさにたじろいだ。

 

 

3月12日水曜日

願いごととは約束された未来の光のこと。

願いごとがあるということそれ自体がひとつの未来を見ているということ。

だから願いはすでにほとんど叶っています。

なぜなら願いごとは急にどこかから降ってわいた異質なものではなく時間の叡智が教えてくれるものであるので。

願いが叶うという現象はすなわちもう知っていた未来に向かって進んできた結果ということなのです。

 

3月17日月曜日

湖で水の底に失われた古い帝国が姿を現していた力強い晴れの日だった。

 

3月20日木曜日

競争社会はいつか完全に終わるという人間世界を死と再生の春分の日に望む。

 

3月26日火曜日

望みをつねに問われる世界。ほんとうは何もいらないのだとは言えないなにか。向上心と名付けられたもの。物質的ななにか目に見える結果を望むことそのものを強要される社会。目標や野心はなくとも満たされた心で生きるのは簡単だ。鳥の声は整ったバランスを知らせる調和の象徴。今日も無事に軽やかに澄み。物質にとらわれず引きずられることなく。

 

3月29日土曜日

新月の日に種を蒔くと良いらしいがあいにくの雨ふり。あすの朝には1時間なくなっている。長く明るい夜のはじまり。

 

 

 

 

 

 

 

 

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