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 ビブリオフィリアという言葉があるらしいのだけれども、

私は愛書家ですと自称できるほどではなく、ついでに知識もそれほどない。これは感性からまっすぐ来るだけのもので、紙の本という物体そのものを純真に、なんか好きといっているだけのこと。

 

 住居の壁がそのまま全部本棚になっていて、壁が本、本が壁、のような居住空間で本たちに包まれるように生活していたいけれど現実を見ると、私はなに者でもないのでただ空想夢想を続ける。本を眺めたり手にして、一頁ずつ紙をめくるときの幸福感というのか、開いたところに広がる文字列の風景の美しさに、ふわっとこみ上げる高揚感のようなものは、それを知っている人たち、例えばビブリオフィルみたいに定義づけるのは難しいけれども確かに存在する「なに者か」たち、にならきっと分かってもらえるかな、きっとどこかで静かに頷いているかな。