立秋の
巨大な掌によって、ゆっくりと丁重に、世界は薄葉紙で包まれてゆく。
空の色は淡く水色、ぎらぎら揺れる湖水はまだ濃く深く青く。対面する色が色からずれる、ものごとが繊細に始まるとき。空は時間を先に知り、先取りの空に出遅れる水。
夏の山並みが蜃気楼の向こうで渇いている、山は反射の色彩美を背負い、輝かしい入り日を、直立して愛でる。
小さなつむじ風、赤ん坊の丸い頭頂に似たそれが、木の葉で独り遊ぶ。熱波に耐えた薬草たちが夕涼みに踊ると、茂みのほうからちりちりちり、めぐる命の音が始まる。
2022年8月11日
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